和食のマナー
 日本を訪れる外国人は、和食の作法に途方に暮れてしまうことがよくあります。箸の取り方、茶碗の持ち方、何から手をつけてよいものやら、とまどっているようです。しかし、外国人だけでなく、現代の日本人も分からなくなっているようです。

 洋食がさらに広まる中、正式な席での和食の席が少なくなりました。そのため、日本人は自分たちの食事の作法をなくしつつあります。

 食事のマナーは、動物的な欲求をむきだしにした振舞いを押さえて、食事を通じて人としての心の通い合いをもてるようにとの配慮から考え出されました。この意味で、心構えについては和食の作法も洋食のマナーも大きな相違点はありません。しかし、基本的な点で2つの文化は大きく異なります。

 日本はヨーロッパ的な狩猟文化と違い、農耕社会でした。そのため、さまざまな食物に恵まれました。日本で料理の方法が早くから発達したのはおそらくこのためでしょう。食事の作法も欧米よりずいぶん早くから登場しました。平安時代の有識故実にも食事の作法がみられ、14世紀半ばには小笠原流の食事の作法は標準として成立していました。

 和食の作法は、お箸に始まります。引き裂く、つまむ、ちぎる、この単純にして多芸多才な道具なしで語ることはできません。お箸は日本独自のものではなく、中国や韓国、ベトナムなどでも使われています。しかし、こうした国々ではお箸と一緒にスプーンも使います。和食の作法ではまさに「箸に始まり箸に終わる」のです。他の道具は使いませんし、必要ありません。

 お箸にはたいへん重要な役割がありますので、使うにあたって、細かいしきたりがあります。しかし、これらのしきたりは非常に合理的なものです。残念なことに、洋食がさらに広まりつつあるなか、お箸の使い方を熟練する機会が減り、お箸を上手に使うことができる人が減ってきています。

 箸の扱い


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